術後の癒着防止、専門家の意見


毎日新聞 2008年3月28日 東京朝刊より
http://mainichi.jp/select/science/news/20080328ddm013100154000c.html


内容から簡単にまとめてみますと・・・

  • 仕組み不明の合併症で、患者の6割が発症してしまう
  • ストレスを避け、食事にも注意
  • 術後の適度な運動で、腸の動きを改善


癒着についてのわかりやすい説明を引用させていただきます。

 おなかの中にある胃や小腸、大腸、肝臓、胆のう、ぼうこうなどは腹膜という薄い膜で覆われている。腹膜が手術や腹膜炎などによって傷つくと、腸管と腹壁や腸管同士がくっついてしまう。この状態を癒着と呼ぶ。

 開腹手術を受けた患者の6割以上が腸管癒着に陥るとされる。状況によっては消化管の通過障害が発生する。癒着を防ぐ技術や医療材料が工夫されてはいるが、完全に防ぐことは不可能だ。

 白龍湖病院(広島県三原市)の小林直廣院長(総合診療科)によると、手術後3週間ごろが最も症状が進む時期で、以後は徐々に軽くなっていくのが一般的だ。しかし、最終的にくっついて離れなくなる部分ができてしまう場合もあり、それによって腸管が完全に詰まると腸閉塞となる。2年間経過しているなら、癒着の自然治癒は期待できないという。


腸閉塞を繰り返すと再手術となるケースも少なくありません。その際、重度な癒着がある場合には、はく離操作に時間がかかり、かつ腸管(血管)を損傷してしまうリスクもあります。


一方で、癒着防止の技術もあります。

  • 腹腔(ふくくう)鏡を使った鏡視下手術
  • 腹膜の損傷部と腸管の癒着や腸管と腸管の癒着を防ぐ特殊なフィルムを張る
  • 体内に吸収される「吸収糸」の使用


これらのおかげで、再手術による癒着の可能性はかなり軽減されているそうです。


また、新しい予防薬の開発も進められています。これまた引用・・・

兵庫医科大の中西憲司教授(免疫学)らのグループは、マウスを使った実験で、HGF(肝細胞増殖因子)を注射することによって、腸管癒着を予防することに成功した。

 中西教授は「癒着の仕組みはまだよく分かっていないが、予防薬として5年以内に臨床試験を始めたい。すでに癒着が完成してしまった場合は、癒着の悪化を招く血栓ができやすいような生活はよくない。ストレスを避けて、適度な運動などで腸の動きをよくする工夫をしてほしい」とアドバイスしている。


薬で癒着が防止できる日はやってくるのでしょうか。
まだまだ先の話ですね。